この作品の舞台となる"アンバーグラウンド"と呼ばれる大地は、
その世界の大方が常闇に包まれており、昼夜問わず頭上には星々が瞬いている。そんな世界です。
その世界観とそれに副った演出とが相成って、1ページ1ページ、まるでその中にたくさんの星を詰めこんだかのような...。
私にとってこの「テガミバチ」は思わずそんな錯覚を覚えてしまうような、とても芸術的な作品でした。
その世界を照らす唯一の光、人工太陽。
その恩恵を受けることを許されるのはわずかな特権階級の人間に限られており、多くの人々は光の届かぬ極寒の地での生活を余儀なくされています。
夜の明けることのない一面の銀世界、その暗闇に閉ざされた世界の架け橋を担う使命を帯びた者、それがテガミバチ。
彼らが対峙することとなる危険の一つに、「鎧虫(ガイチュウ)」と呼ばれる存在があります。
これは剣より硬く、拳銃の弾をもはじき返すほど強固な外郭を持つという、人を襲う習性を持ったこの世界に生息する生物です。
そしてこの敵を倒す唯一の手段は、相手(の心?)に自身の「こころ」を共鳴させるということ。
これは悪はただ打ち滅ぼすのみ、というような代物とは異なり、この趣向にも興味を惹かれました。
人々の「こころ」を感知し、襲う習性を持つという鎧虫。まるでそこに何かを求めるかのように...。
彼らはなぜ人を襲うのか、このことも今後の気になるテーマの一つといったところでしょうか。
どことなく宮沢賢治の世界を彷彿させるワードや、ただ美しくきれいなだけという訳ではなく、その内に儚さを秘めているこの世界観。
第二話はニッチの登場で一話とはちょっと毛色が違った印象だったけど...、まあこれも良し(笑)。
昨今の漫画作品に見られない感動を与えてくれる、今後の展開を気にせずにいられないとても魅力的な作品です。