第二次大戦における伝説的な名戦車であるティーガーIのユニークな資料集
です。ドイツ戦車ならではの武骨な機能美、技術偏重のやや冗長な(合理的
でありながら何か不合理のような気もする)メカの魅力を味わえます。
本書を読み始めて間もなくティーガーIは「やっつけ仕事の産物であった。」
の一文に出会い、これが殊の外印象的でした。
このシリーズはドイツ戦車物を中心に数冊購入していますが、一冊ごとに、
たとえ戦時中であってまたそれが戦車といえども、それは紛れもなく工業製
品であり製造メーカーの商品であるというしごく当然の事実を認識させられ
るのです(それは残酷というか悲哀に満ちた商品ではありますが)。
工業製品の設計を職業とする私にとって冒頭の「やっつけ仕事」というのは
身につまされることではありますが、技術的な試行錯誤はもとより、背景に
ある官僚機構の思惑、競合メーカー間の駆け引き、予算と製造原価のしばり
といった、現代社会の日常にも通じるエピソードに満ちているように感じら
れます。
シリーズに共通して文章主体の構成で、写真は(時代的に仕方ありませんが)
すべてモノクロ。塗装色やマーキングなどカラーの情報はイラストによるほ
かありませんが、イラストのレベルは高いと思います。
ページ数の割に高価との意見もあります。確かにあと1〜2割安ければ購入
冊数も伸びる気もしますが、翻訳者や監修者による脚注も充実しており、
そもそもの企画自体を尊重して受け入れることにします。