本書はあらすじから想像されがちな愛と癒しの感動ストーリーではない。グランタ誌の「若手イギリス人作家ベスト20」(2003年)に選ばれた著者が描いたのは、グロテスクな暴力と読み手をにんまりさせる笑いに満ちた、おかしくて怖くてせつない不思議な物語だ。
特にすばらしいのは、小さな物語やエピソードが交錯する後半部分。家路をひた走るティモレオンが目にするさまざまな人々の人生模様には、そのひとつひとつが独立した短編作品と呼べるほどのきらめきがある。また、そうした小さな物語同士に直接のつながりはなく、それでいてどの話も深いところで結びついているように感じられるのもおもしろい。ばらばらに投げ出された生と死のエピソードを束ねているのは、人間という不条理な存在をありのままに見つめるティモレオンの視線。その優しくも冷たくもある眼差しこそ、本書の独特の味わいを生み出す素になっている。(小尾慶一)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
恥知らずなほどセンチメンタル,
By カスタマー
英国のオンライン・マガジンのインタビューで「不幸だから書く。幸福で満たされた状況になったら、僕は書けないだろう」、「恥知らずなほどセンチメンタル」、「最初から三作しか書かないと決めていた」、「The Smithsの名曲を一つ聞けば、賞を取るような小説なんか読む必要はない」、「小説は人の感情に訴えるものでなければ意味がない。クレバーな小説は嫌い」と言い放つダン・ローズの三作目。これ以外に恋愛小説はいらないのではないかと思うほど「SAD」な前作の短編集Don't tell me the truth about loveにも唸りましたが、Timoleon Vieta Come Homeの逆説的なセンチメンタルにも、やはり腰が抜けました。腰が抜けるような小説を書く作家を見つけることなんて、十年に一度ぐらいしかないのだから、彼にはもっと書いて欲しい!!
10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
美しいという言葉は使いたくない。,
By
レビュー対象商品: ティモレオン―センチメンタル・ジャーニー (単行本)
不条理なんてものじゃない。醜悪で残酷な物語。ラッシーのような、名犬物語りでも、愛に満ちた愛犬物語りでもありません。 犬をお飼いになっている方や、動物好きの心優しい方には、絶対オススメしません。 読み終えた時は、息を呑み、涙も出ませんでした。 はじめは、愛らしい雑種犬「ティモレオン・ヴィエッタ」の飼い主、コウクロフトというおやじに、 久々に、後あじの悪い、それでいて抗しがたい魅力のある作品と出会った。
8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
不思議でリアル,
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レビュー対象商品: ティモレオン―センチメンタル・ジャーニー (単行本)
グッと来ました。予感はしていました。しかし、 後半の、あまりにも美しすぎるエピソードの連続に ついつい警戒心が薄れ、予感を忘れて惹き込まれました。 ゆっくりと気持ちよく不思議な夢を見ていたのに、 不意にハッと目を覚ましたら大遅刻だった、 というような感じでした。 このように物語(フィクション)に誘われる体験は、 とても気持ちが良いものです。
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