ランスが2度目の復帰を果たしたツールを中心にした2009年シーズンのノンフィクション。
筆者が米国のサイクルジャーナリストなので、ツアー・オブ・カリフォルニアやツアー・オブ・ジラなど
英語圏でのレースの話が多め。取材対象も英語を話せる選手、関係者にやや偏る。
ただ、同社のランス本既刊2冊が7連覇を取り上げた「礼賛系」だったのに対し、本書はやや距離を置き、
「弱くなってしまったランス」「コンタドールとのあからさまで醜い確執」とネガティブな面も描き、
やや冷ややかだ。「ライター」と「ジャーナリスト」のスタンスの違い、というべきか。
なので、単純に勝利の感動を求めたい人には既刊2冊をお薦めする(文体も読みやすいし)。
ただし、ブリュイネールの自伝が「聞き書き」。2冊目が「あとからのインタビュー集」というスタイルを
取るのに対し、ストリックランドはアスタナのチームカーに同乗(ドライバーは時にブリュイネール!)
したりするので、現場の迫力は本書が一番だった。
なお、「惨敗」に終わった2010年ツールの兆しは、本書の随所に見られる(かつては絶対しなかった落車とか)。
復帰即3位が「快挙」ではなく、「終わりの始まり」だった現実がこの本の行間には隠れている。