多くのスポーツにおいて人間は機械に近づこうとする。「ツール・ド・フランス」はそんな状況を見事に活写した作品だ。曲調は過去の作品「コンピューター・ワールド」あたりと似通うように思うものの、山あり谷ありのロングランを行うツール・ド・フランスの情景を俯瞰するかのごとき感覚を呼び起こす音楽描写の冴えはさすがクラフトワークである。この目はマクロだけに留まらない。#6「ヴィタミン」では、ミクロの目で人体の中で起こる化学反応すら描きだそうとする執念にも頭が下がる。全体を一貫したコンセプトが裏打ちした出来栄えは傑作「アウトバーン」の長時間トラックを聞くのに似た感動をもたらしてくれることだろう。