出演者と監督の、非常に真摯な製作、演技への姿勢にはただただ頭が下がります。私自身も「ウツ」の何たるかという現実は、少なくとも世に氾濫する単なる「情報」以上には、経験的に知っているつもりですが、その私に関する限り、納得のゆく丁寧な造り方にひたすら頭が下がりました。ウツの現実を非常によく研究して作っていますし、演じています。しかも舞台設定の大半は主人公夫婦が暮らす「家」とその延長上の室内劇で、そこに展開する物語の枠組みは、精神科医療とか臨床心理、カウンセリングといった、ある意味「産業・ビジネスモデル」と化して、手垢がつくだけついた分野からみた「治療行為」や「闘病」とは一線を画して、不可思議な「宇宙風邪」から立ち直るうえで「大切なの」は何なのか?という一つの解を誠実に求めています。本当は「一番大切なもの」と書こうかと思ったのですが、現実にウツに苦しんでいらっしゃる方は、十人いらっしゃれば十人が、重篤度やら、好むと好まざるとに関わらず与えられた生活条件や社会的な立場など、それぞれの個別状況が先にありきで、それに応じて自ずから解は変わるのだろうと思うと、「一番」という押しつけがましい修飾詞を使うのは慎むことにします。またその「大切なもの」が何かについては、同じ理由でここには触れません。ネタバレを避けるとか、そんな問題ではなく、これ以上は軽々しく論評すべきでないと思うからです。この映画にレビューを投稿するのは難しいですし、これが今苦しんでいらっしゃる方への「再起の道標」である、などと申すつもりは私にはさらさらありません。でも非常に真摯なつくりの名画であることは断言して良いと思います。そして、ご覧になる一人でも多くの方に、この一篇が「宇宙風邪」からの再起のため、かすかでも光明となることを祈るばかりです。