野依良治氏のモットーは「オンリーワン」だと聞いたことがあるが,この世の中,本当の意味で「オンリーワン」と言えるものがあるとは,思っていなかった。しかし,ここに,その本物を見つけてしまった。いわゆる消滅危機言語(ユネスコによれば二千数百あるらしいが)の一つを,音韻から文法,意味論まで,とにかく全て体系的に記録しておこうというのが本書。いわゆる生物多様性の場合,失われそうになったら,とにかく遺伝子技術から何から駆使して強引に保存するということは出来る。しかし,言語の場合,話者をいつまでも生かしてくことは出来ないわけだから,出来るだけ詳細に残すしかない。しかし,実際にはどうするのか? 方法も未確立な中,たった一人で,しかも女性が南太平洋の孤島に渡って文字通り孤軍奮闘した結実が本書だ。だから,あと二千数百マイナス1残っている消滅危機言語を記録しようとする場合,何よりこの本がバイブルになるというわけ。そういう意味で数十万しても良いと思う本が,動画CDも付いてこの値段! そういう意味でも,オンリーワン。恐れ入りました。