竜巻は『オズの魔法使い』以来、アメリカの想像力の一部になっています。中西部の平原地帯の、完全に平坦な、見通しのきく風景を、するすると空から降りてきた巨大な蛇が動いてゆく姿は、見ていてもっとも畏怖させられる自然現象のひとつでしょう。この作品は子供時代の体験(目のまえで父親が空に連れ去られる)から竜巻の予報システム開発にとりくみはじめた女性科学者とその夫の関係を軸に、とりつかれたように竜巻を追う一群の人々を描いたものです。人間にとって、あまりに強力な自然現象に対する畏怖の気持ちはあまりに本性的なものなので、かきくもる空や吹き荒れる風を見せられると、それだけで私たちは目をみはり、あっけにとられてしまいます。空が映り、風が猛威を発揮すると、そんなことはどうでもよくなってしまいます。そして竜巻が吹き過ぎたあとの美しい空の光は、揺れるトウモロコシの葉やヒマワリの花とともに、忘れがたいものとしてスクリーンに描き出されています。それのどこまでが実写なのかはわかりませんが。サスペンスもののつねとして、危機の時間の処理にあたって、相当なごまかしがあります。竜巻そのものについての科学的説明が足りなすぎるのも残念。結局、竜巻という題材は劇映画として見るよりも、科学ドキュメンタリーとして丁寧に描いてもらったほうが、はるかに感動させられるような気がします。ところが、つい最近も、アメリカ中西部ではまたもや竜巻が荒れ狂ったようです。ピックアップに乗った夫婦が車ごと空に吸い上げられ、二人とも亡くなるといういたましい事故がありました。地水火風という四大元素のひとつ「風」は、やはり人類にとっては永遠に畏怖の対象であるほかないでしょう。