大半が不倫の歌です。辛く苦しい気持ちが31文字に凝集され、胸に容赦なく突き刺さる、不倫経験女性にはたまらない歌集だと思います。不倫相手には10歳の娘がいて、その少女のことを『淡く鋭く我と関わる』、『娘という名の生き物』と詠んでいます。ある意味、娘は妻よりもはるかに強敵です。『焼肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き』という歌に一部のレビュアーから激しい反感を買っているようです。夫に不倫された経験のある妻の苦しみもさながらなのでしょう。そんなレビュアーをも見透かすように『巣づくりの本能見せてヒト科のオンナの妻というものあなどりがたし』、流石、うまいです。半ばあたりで『きつくきつく我の鋳型をとるように君は最後の抱擁をする』と別れの決意を詠んでいるにもかかわらず、最後は『「今」だけをたずさえて行く夜の果て』と詠み、二人、共に揺れる心がよく伝わってきます。この恋はこの先どうなっていくのでしょう。気になるところです。