中でも著者の思い入れが感じられるのは、「ダーシェンカ、あるいは子犬の生活」の章である。階段を転げ落ち、靴を噛みちぎり、池にまで飛び込んでしまう、やんちゃな子犬ダーシェンカに「いまいましい」と悪態をつく毎日の著者。それでも、ダーシェンカがよその家にもらわれて行ったあと、「急に火が消えたようだ」と戸惑ってしまう。動物に対する著者のやさしい眼差しと、深い愛情がかいま見える場面だ。
そんなダーシェンカをはじめ、本書では母親のイリス、怪力で突拍子もない興味の持ち主のミンダなど、登場する動物たちが生き生きと描かれている。自然の声に導かれ、ダーシェンカが歩くお稽古をする場面などは、多くの動物好きの読者を楽しませるに違いない。また、人間と動物との愛と信頼をテーマにした「犬についてそれから、猫についてもう少し」の章も見逃せない。不信の育成によって生きる政治は蛮地の政治であると、ナチズム吹き荒れる当時の社会状勢を鋭く風刺している。(西山はな) --このテキストは、 文庫 版に関連付けられています。
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