通信メディアの発達は新しい恋愛を生んだ。チャットで始まる恋愛も
その一つだ。本書はチャットというコミュニケーションによって人がど
う変わるのか、そして、その人が営む恋愛がいったいどうなるかを
論ずる。
…のはずなのだが、どうもまどろっこしい。というのも前半は、その
ほとんどを恋愛でなくチャットを含むインターネットメディアについて
の解説に当てているのだ。チャットを利用したことのない人に予め
知っておいてもらいたい知識なのかもしれないが、約200pのうち
90pまでそれだとちょっと辟易する。
ともあれそこからが「チャット恋愛」だ。第三章で語られるのは、チャ
ットを経験するにつれ日常を離れたところに生まれる「もうひとりの
自分」について。「ほどほどの優しさ」に包まれたチャットの空間で
は、人々が普段は考えられないような振る舞いをしてしまうという。
例えばヴィデオチャットにて一時期、女性があられもない姿をカメラ
に堂々とさらすという驚くべきやら喜ぶべきやらな現象が起きてい
たという。そんなことをいっている著者も、実はチャット相手らにはや
したてられ「別にいいかな」とカメラに「赤いビキニ」姿を披露したと
いうのだから、チャットの魔力は恐ろしい。
続く四章にて明かされるのは、著者が見聞きしたチャット恋愛の
“失敗例”。両親に子供を預けながら月に一度好きな男の元に駆
け込む悲惨なバツイチ女性や、一時の火遊び程度に思っていた
不倫相手のチャッターから執拗なストーキングをうけてた主婦ま
で、なかなか悲惨な例が続く。
このようにチャットを語る著者の言葉が流暢なのは、早々にカミン
グアウトしているが、彼女自身も実は以前、「チャット依存」と呼べ
る状態だったらしいのだ。頻繁に引用される渋谷哲也も別の本で
“以前”は自分もネットに依存症ぎみだったと書いていて、どうも
この手の本を書く人は、本を書くことで昔の自分の「みそぎ」を行っ
ているように思える。