原作は、性描写で物議をかもした作品だが、今の感覚で読むとほとんど嫌悪感を抱くところはない。
むしろ、女性の自立や階級を壊す関係を恐れて、そのようなレッテルを貼ったのでは?とさえ思うほどだ。
本質は、他のところにある。
この新訳は非常に読みやすく、かつ品もある。文体にリズムが感じられる。日本語として美しいと思う。
他のレビューにもあったが、猟番の方言については多少のひっかかりを感じた(九州弁ぽいもの)が、それを差し引いても十分に秀逸な訳であると思う。
この訳者による解説本も読んだが
『チャタレー夫人の恋人』と身体知―精読から生の動きの学びへ、、一般読者にもわかりやすく、また研究者の要望にも応える内容も盛り込まれており、そちらもぜひお勧めしたい。個人的にはロレンスが描いた絵を見られたことが大変に参考になった。
”草食男子”、”友達夫婦”などがもてはやされ、高度に情報化されて、リアルな身体的感覚が軽んじられて閉塞感がただよう現代日本。
本書を読み進んでいくうちに、今の自分が知らなかった感覚、社会が忘れて置き去りにしてしまったものが感じられるようになるかもしれない。
知的には満たされているのに、どこか満たされない、そんなあなたにお勧め。