チャイコフスキーは、クラシック界屈指のメロディ・メーカーであり、その本領が最も発揮されているのが、三大バレエ曲のうちの、この「白鳥の湖」であり、「くるみ割り人形」だろう。
この「白鳥の湖」は、聴きどころを中心に収録したハイライト盤や組曲盤で聴かれるのが一般的であり、私も、アンセルメ指揮スイス・ロマンド管盤、フィストラーリ指揮コンセルトヘボウ管盤、ストコフスキー指揮ニュー・フィルハーモニア管盤、ムーティ指揮フィラデルフィア管盤を持っているのだが、聴きどころ満載のこうした抜粋盤なら、はっきりいって、どの盤で聴いても、まず、がっかりすることはない。
しかし、バレエなしの音楽だけで長時間付き合わされる全曲盤ともなると、やはり、盤を選ばざるを得ない。私は、評論家諸氏の評価が特に高い、このプレヴィン盤(「21世紀の名曲名盤」(2004年音楽之友社)第1位)とアンセルメ盤(同第3位)で全曲盤を聴いてみたのだが、やはり、このプレヴィン盤が、文句なしに素晴らしいと思う。
プレヴィンは、美しく柔らかな演奏を身上とする指揮者であり、評論家諸氏の評価はすこぶる高い人なのだが、リスナーからは、必ずしも高い評価を受けているとはいい難い。かくいう私も、これまでは、美しく柔らかな演奏とは裏腹の、大人し過ぎる演奏が物足りず、評論家諸氏の高評価に首を傾げていた。しかし、ここで聴くプレヴィンは、これまで私がCDで聴いてきたプレヴィンとは全く別人で、音楽が自然に美しく流れるだけではなく、アンセルメ以上に、実にドラマティックで、メリハリ豊かな演奏を繰り広げているのだ。この演奏で聴けば、157分という極めて長い演奏時間も、全く退屈することはないと断言できる。短い抜粋盤で聴き馴染んだ通俗名曲としての「白鳥の湖」とは異なる、「白鳥の湖」の本当の姿に触れることができる最適なアルバムとして、一聴されることをお勧めしたい。