チャイコフスキーは難解な技巧は完璧、表現も非常に豊か。そして絶対的に洗練されている音色は本当に綺麗で、五嶋みどりさんにしか出せないものだと思います。まだかなり若いころのレコーディングだと思いますが、なぜここまで出来るのか、本当に素晴らしいの一言に尽きます。クラウディオ・アバドとベルリンフィルハーモニックの演奏もパワーがありテンポも良い。
あまり派手な演奏ではありませんが、音楽的に素晴らしいです。激しくダイレクトに表現するのではなく、聞くにつれてじわじわと良さが分かってくるような演奏です。もし生でコンサートホールで聞いていたのならもしかしたら一瞬で魅了されていたのかも知れません。しかし、CDから聞こえてくる音からはそういう印象です。なにはともあれ、しっかりと解釈を熟考した結果の、良い演奏だと思います。音色やフレーズのつくり方が綺麗でクリアな奏法ですが、さっぱりしているわけではなく、中身の詰まった引き締まった音といえば良いのでしょうか、とても聞いていて楽しいです。テンポは所どころタイトであったり、曲調によってリラックスしたりを自在にしており、なかなか最近の演奏では珍しいと思います。最近の演奏は速めでよりタイトなテンポが多いと思います。
ライヴ録音なのでソロバイオリンの音がオーケストラに比べ小さめに聞こえますが、自然といえば自然に聞こえます。
ショスタコーヴィッチは荒々しさ、率直さが少々欠けている感じはします。ダイレクトな表現を期待していると、2楽章、カデンツァ、フィナーレはそういう面では物足りなさがあるかも知れません。オーケストラも若干丁寧な感じがします。しかし中身の濃い内密的な演奏で、何度も聞いているとだんだんその精神的な域からエネルギーが伝わってきます。テンポはリラックスしてはいないですが、緊張感がありながら遅めです。ロシアのバイオリニストならもっと直感的な解釈で演奏している録音があると思います。ショスタコーヴィッチに演奏を委託されたオイストラフのもそうだと思います。しかし、このCDで五嶋みどりさんのバイオリンは、ショスタコーヴィッチの曲の美しい面を最大限に発揮していると思います。
バイオリンの魅力が分かる、そして音楽的な質も良いCDだと思います。