アイザック・スターンのチャイコフスキーはセンチメンタルである。なるほど、初恋ねぇ。言いえて妙だ。そもそも、チャイコのこんなヴァイオリン協奏曲は聴いたことがない。オーケストラがヴァイオリンをたてながら、しかし絶妙な掛け合いを演じる。
もちろん白眉は第一楽章だが、最高に息の合ったコンビネーションは最後まで続く。オーマンディ&フィラデルフィア管は交響曲を奏でるときよりも、協奏曲のほうにむしろ本領があるのではないか。例えるなら、渚に立つ少女に向かって、波が満ちたり退いたりしているようだ、とでもいえばいいだろうか。それほど、ピッタリなのである。
一方、シベリウスは荘厳である。どしーんと構えて、投網をかけるようだ。聴く側のこちらは、かかった魚だ。うまく術中にはめられた感じがする。網をうつスターンと、ちょうど良い波目を与えるオーケ、といった感じだろうか。
チャイコフスキーが長調なのに対して、シベリウスのほうは短調なので、もちろん違うのだが、どちらもメリハリが効いている。
音楽のことはよぅ分からんが、上のように書けばイメージがつかめるだろうか。百聞は一見に如かずなのだが、おどろくほど良い音楽であることには違いない。