ニューヨークシティバレエ団の創設者にして今世紀最高の振付家ジョージ・バランシンが、同郷の作曲家チャイコフスキーについて語り、その過程で彼の人生にまつわる様々な風景や人物を回想した一冊。対話が行われたのはバランシンの最晩年。同書の出版を見ずしてバランシンはクロイツフェルトヤコブ病という奇病で世を去った。
考えてみれば、チャイコフスキーを語るにバランシンほど相応しい人間はいないのではないか。
二人とも「ペテルスブルク人」であり、帝政ロシアが育んだロシア人であり、音楽と共に生きた職人芸術家である。バランシンは心からチャイコフスキーを愛し、チャイコフスキーの音楽に多くを振付けた。チャイコフスキーを魂の深部で理解していた、あるいは、理解していると感じていた。
表現形態は違えど、共に音楽の天才であり偉大な芸術家。天才が天才を語るのだから、これは大変に稀有な一冊だと思う。読んでいて幸せだった。
ちなみに英語版は絶版だと記憶している。日本語版が入手可能であることに感激する。日本ってなんてレベルの高い国なんだ(感涙)。