不滅の少年・ピノキオを生み出した偉大な国イタリアの誇る、素敵な児童文学。登場人物はチポリーノやさくらん坊やという名前からも分かる通り、玉ねぎやトマト、かぼちゃ等、皆野菜や果物ですが、そうしたファンタジー部分以外は人間界と同じです。理不尽な権力を振りかざして、真面目に懸命に生きている庶民を虐げるトマト公爵ら貴族たちに、勇敢にして聡明な玉ねぎ小僧・チポリーノと、その仲間たちが戦いを挑みます。
作品のテイストとしては、ケストナーの「エーミール」や「点子ちゃんとアントン」に似た所があると感じます。楽しいユーモアや、人間についての鋭い洞察、人物造形の妙の底辺には、独裁者に対して抗戦する者の雄雄しい魂が脈打っているのです。
この作者は人物造形がうまく、登場人物が型にはまった勧善懲悪的な存在ではない点がよいです。かといって、適度に典型化されているので性格が複雑すぎもしません。
挿絵はロシアの画家がつけたものだそうですが、非常に物語にマッチしていて、ポイントが高いです。表紙だけではなく、中にもこの可愛い挿絵が沢山入っていて、ぱらぱら絵だけ見ていても楽しい。うらなりかぼちゃのお爺さんと自宅の挿絵は、いつ見ても涙が出そうになります。こういう、真面目に慎ましく生きてきた人を平気で虐めるような奴は、我われが勇敢なチポリーノになって、社会的にぶっとばしていきたいものです。
入手しにくい本ですが(異国イタリアの独裁時代という作品背景が、現代日本の子供たちにとっては縁遠い印象なのでしょうか。私は古本で購入しました)、少し値が張っても購入したい良質の児童文学作品だと思います。・・と思っていたら、最近再版されて何よりです(笑)。
余談ですが、この本はジブリ美術館の図書室にも置いてあります。