本書の原文は英語で書かれています。原題はThe Tibetan Book of Living and Dyingです。邦題の「生と死の書」と言うタイトルから受ける印象とやや異なっているように思います。原題に忠実に訳すならば「生きてゆくことと死んでゆくことのチベットの書」となると思います。どういう風に死ぬか(そしてそのためにどう生きてゆくか)というプロセスをタイトルは示唆しているように思います。死そのものと、死ぬときのプロセスが書かれている書だ、というほうが分かりやすいでしょうか。
本書は分厚くかつ死というテーマを扱った内容の重たい書物です。しかし少し大きめの活字でかつ極めてわかりやすい文章で書かれており親しみやすい本でもあります。少し読んだだけで穏やかな気持ちになります。死というものが決して忌避すべきものでないことが分かります。
購入してすでに10年以上の年数が経過していました(奥付を見ると1995年10月25日第1版)。手放せない大切な本となっています。原本は1992年に出版され、この翻訳は1995年に出版され両方とも版を重ねて売れ続けています。
海外で生活していた時に、この本の英文版(原本)に出会いその時に英文がよくわからないので日本に戻った時に翻訳版を見てみました。翻訳版(日本語版)は非常にこなれた訳で大変読みやすくなっています。海外での生活は、娯楽も少なくシンプルな生活となっていましたので内省的な面が強調されました。そのような環境で読むこの書は心に深く沁みるものでした。
現在ではベッドの枕もとに英文版と翻訳版を置き、寝る前にどちらかの本をとり、任意のところを開き数ページ読んでから寝ることにしています。この本を読むと心がとても穏やかになり、生きる意味そして死の意味を受け止めることができるような気がします。昼間の出来事から離れ、就眠前の時間を一人ベッドに腰掛けてこの本とともに過ごすことで穏やかな気持ちに導いてくれます。
またチベット仏教でのいくつかの修行法も紹介されています。その中で「トンレン」の行についてはこの本で初めて知りました。慈悲心ということもこの本を読みはじめて理解できたように思います。
ほかの宗教書を多数読むよりもこの本一冊を、繰り返し、繰り返し、読むほうがはるかに得るものが大きいように感じます。チベット仏教の本は最近多数出版されていますが、その中でも特にこの本がもっとも好きです。