けっして売れっ子とは言えない小説家の耕平は、妻を事故で失い、
シングルファーザーとして、小学生の息子と二人暮らしをしている。
初版部数も抑えられ気味で生活や描き続けることに不安を覚えてしまう耕平だが、
編集者、ファンの書店員、行きつけの銀座の文壇バーの女性、亡き妻の両親、
そして息子…周りの優しさに支えられる日々。
そこに、あの直本賞(笑)に初ノミネートされたという知らせと謎のモテ期が…
おしゃれな都会派の作家という印象がある石田さんですが、今回は
ユーモラスな、人も子供もにんまりしてしまうような良質なホームドラマを
描ききりました。これ、新聞連載だったみたいですね。
とにかく、主人公の耕平さんが素敵。息子のためにご飯を器用に作り
担当編集者にも素直に感謝し、友達思いで、同業者のすばらしい小説に嫉妬を
一瞬してもちゃんと讃辞を送り、才能を認める。
女性に対しても礼儀正しく紳士で、ちょっとシャイ・・・という、なんだか
こんな感じが良い人はいるのかな、というくらい、ふつうにすてき、なんです。
朝ドラでもいけるかもしれない、というくらい爽やか。でも嘘っぽくない
(出版業界にいる石田さんが描いたので、小説業界事情なんかはかなり
リアルなんだろうなーという感じがするし)。
ところで「池袋」(池袋ウエストゲートパークシリーズ)、「月島」(14)、
「渋谷や青山」(美丘)などなど、街も主人公のひとつ、みたいな石田作品
ですが、今回は、父子が住む神楽坂がメインの舞台になっていて、
それもまた、よい演出効果になっています。女性とデートするような
ステキなお店もあれば出版社も近い。都会っ子っぽい子供の描写にも
一役買ってる感じがします。