第1部の「28歳の革命」が、
革命家チェ・ゲバラの輝かしい成功と達成の物語であるとすれば、
第2部の「39歳 別れの手紙」は、彼の挫折と死の物語です。
この2つの物語はくっきりと明暗のコントラストを成して観る者に提示されます。
「第1部」では1964年のニューヨークからはじまり、
女性ジャーナリストとの丁々発止のやりとりも楽しいインタビューシーンや、
ゲバラの人生でもっとも華やかな瞬間となった、
「祖国か死か」で有名な国連演説のシーンを合間にはさみながら、
喘息持ちのアルゼンチン人医師がキューバ革命に参加、
激しいゲリラ戦を戦い抜き、カストロらと共に革命を成し遂げるまでを感動的に描きます。
しかし、ソダーバーグも話しているように、
この映画の本質は「第2部」の方にあるのです。
内面も外見も魅惑的な愛すべき「第1部」の主人公は、
「第2部」では最初から最後まで周囲や内部の裏切りと無関心に苦しみ、
持病の喘息の悪化と厳しい自然環境に痛めつけられ、
心身共にボロボロになりながら劣勢の中で戦い続け、
最後には刀折れ矢尽きて、無残に処刑されます。
この辛い物語には、しかし、
まるでボリビアの峡谷を吹き渡る風のような、
不思議な突き抜けたすがすがしさがあります。
それはチェ・ゲバラという人の無私で清冽な人格、
人間の理想と正義の可能性への強い信念が、
この作品の隅々にまで漲り、観る者の心に迫ってくるからです。
キリストがそうであったように敗北の果てに永遠の命を得、
人種や思想の相違を超えて、21世紀に生きる私たちの心のイコンとなったからです。
過剰な演出を一切廃し、音楽も効果音も最小限に抑え、
ひたすら淡々と時系列に描かれる「チェ・ゲバラの最後の戦い」、
20世紀を代表する熱いカリスマを熱演し、
スクリーンに鮮やかに蘇らせたベニチオ・デル・トロと、
取り上げる対象の複雑な立場・性格を鑑みれば、
政治的にも興業的にもリスクの高い冒険となることを恐れず、
7年間の真剣なリサーチの元にこの大作を完成させた、
現代のハリウッドを代表する世界的「アメリカ人」映画監督S・ソダーバーグに、
心からの「ありがとう!」を贈ります。