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ローマ法王を父に持ち、10代にして枢機卿の地位に着く。その後還俗し、ローマを中心とした中部イタリアで法王領を平定し、勢力範囲を広げる。妹のルクレッツィアは美人で知られ、兄チェーザレの意の元、政略結婚を何度も重ねる。小国に分裂し、フランスやスペインといった大国の干渉が絶えなかったイタリア。外交と政治と軍事が密接に繋がり、権謀術策、陰謀、実弟や実妹の夫も対象とする謀殺、昨日の敵は今日の味方、敵の敵は味方、とばかりに活躍し、政情をリードしていく。その現実主義で合理的、怜悧な判断、革新性など、戦国期の織田信長あたりを連想するが(ルクレッツィアはさながらお市の方か?)、チェーザレの全盛期は20代と遥かに若い(彼は32歳までしか生きなかった)。
活躍が華やかならば、その運命の変転も劇的。ローマ法王の父とともにマラリアに罹り、自らの運命を変えてしまう・・・(毒殺されたという説は著者は退けている)。
後年の「ローマ人の物語」で十二分に発揮されている、著者独特の小説でもなく、伝記でもない、という著述スタイルは本作でもすでに現れている。ただし、「ローマ人」では、カメラを寄せたり、引いたり、時として現代から時代全体を俯瞰したりと、自在な視点で描いてあったのに対し、本作はまだそうした自在な領域には達していないように思える。チェーザレを見つめる著者の視点は一定で、舐めるように対象を描き出すものの、内面には入らないのが、やや物足りなく感じられた。
しかしながら、日本ではなじみのうすい人物の紹介でもあり、またともすればその芸術史的な側面からのみ語られることが多いルネサンス期イタリアの描いたという点で大変興味深い一冊である。
チェーザレに惚れながらも、溺れないその筆致は、己の野望の実現のため戦い敗れ去った者の誇りと気概を感じさせ、胸を熱くさせる。
20数年前の浪人時代に、この本をはじめて読んだ。本屋で平積みになっているこの本を見た時、どういうわけか、この本は絶対に面白いと感じ、買わずにはいられなかった。
そして、理想に溺れず現実を見据えた情熱というものを知った。以来、私の愛読書である。
いまだに読むたび、チェーザレの若き情熱を、また、それを描く作者の若き情熱を感じ胸が熱くなる。
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