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とはいえ、本書の語り手である青年は後世の「革命の英雄」という自身への評価を爽快に裏切っているように思う。もう少し言えば、20代前半の彼には人々の厚意を吸い尽くしてトラブルを撒き散らす天賦の才能を持った大きな悪童といったイメージが相応しい。友人のグラナードとともにヒッチハイクや無銭飲食を繰り返し、果てに密航までやらかしてしまう姿には、英雄の名と引き換えに彼が捨てざるを得なかった自由奔放さが溢れている。まえがきでゲバラの娘が「この記録は私にとって、ほかのどんなものより、父を一番近く感じさせてくれる」と寄稿しているが、その言葉は革命家としての彼がついに聞くことのなかったものなのだ。
後年ゲバラは「革命というものは非人間的なやり方で彼らから命を奪うだろうし、後の若者たちを飼い慣らすための模範として、道具として残った彼らの記憶を、利用しさえするだろう。私の罪の方が大きい」という文章を本書の付記とした。歴史に「もしも」はないという。だが一人の青年を「英雄」にするために歴史はどれだけ多くの出会いを必要としたのだろうか。それは殆ど気の遠くなるような偶然の重なりだ。24歳のゲバラが「私たちはたいした人間ではないので、あなた方の主張の代弁者となることはできません」と言うとき、私は確かに彼を身近に感じる。本書が魅力的である理由の一つは、語り手がいまだ誰の代弁者でもない者だからではないか。その率直な記録は知識や思想というフィルターを通さずとも読む者の心に響いてくる。
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