舞台は、ERPソフトを開発して、急成長中のBGソフト社。同社の共同設立者であるスコットとレニー、営業部長のゲイル、関連システム・インテグレータKPIソリューションズCEOのマギーが物語の中心人物である。
株式市場にさらなる成長を期待されているBGソフト社は、ある問題に直面している。大企業相手に行ってきたこれまでの営業活動を続けていては、やがて市場が枯渇してしまうという現実である。そこで、経営陣は中小企業にまで営業の対象を広げようとするが、それにはこれまでと同じだけのコストがかかる一方、見返りは少ない。しかも、概してコストにシビアな中小企業の経営者たちは、金銭的なメリットなしにシステム導入などしてくれないのである。
こんな状況下で、大手の顧客であるピエルコ社のCEO、クレイグから新たな問題が持ち込まれた。「業務の見通しがよくなる」といったあいまいなメリットではなく、導入したシステムがどう利益に結びつくのかを説明して欲しいと取締役会で要請があったというのである。しかも驚くべきことに、調査の結果、利益面でのメリットはほとんどなかった…。
ここから、シリーズの主題であるTOC(Theory of Constraints=制約条件の理論)の話が展開されていく。数少ない成功事例を研究してわかったことは、成功に必要なのは、システムそのものではなく、それを活用するためのルール変更なのだということである。空き時間を作らない、部分最適のスケジュールを行うシステムではなく、全体最適を考えたシステム…。そこにこそ利益向上のヒントがあった。改善することで新たな問題が生じるなど、前作同様のやきもきする展開もあり、読みながら問題解決のための複眼的思考が養われる。
ビジネスパーソンはもちろんだが、今回はソフト会社が舞台だけに、開発者にとっても興味深い内容となっている。クライアント企業への改善提案のヒントになることはもちろん、自身の開発プロセスを見直すうえでも大きなヒントが得られるだろう。(土井英司)
本書はERPパッケージ(統合業務パッケージ)・ベンダーが、大手顧客から「ERP導入で利益がどれほど上がったのか」と質問されるシーンから始まる。回答に詰まったベンダー幹部は、顧客企業と一緒に経営面の効果を考え始める。顧客企業とベンダーは曲折を経ながら、業務改革の必要性に気付く。そこでTOCをはじめとするスケジューリングの手法を駆使し、納期順守率や売り上げを伸ばしていく。しかし、今度は在庫の著しい増加に直面。これを倉庫管理担当者への権限の委譲と業務指標の設定を含めた在庫管理ルールの改革によって解決し、最終的に全社の利益を倍増させる。これが“ルールを変える”という書名の由来でもある。
投資対効果を深く考えず、闇雲にシステム導入に走る経営者やIT業界に対する強烈な批判である。方法論も持たずにモジュールを追加し複雑になったパッケージの機能拡張に難渋しているパッケージ・ベンダーに対する皮肉にもなっている。
登録情報
|
|
あなたの意見や感想を教えてください:
|
||||||||||||||||||||||
|
最も参考になったカスタマーレビュー
11 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
問題をどうとらえ、どう解決するか。問題がルールにあったら,
By
レビュー対象商品: チェンジ・ザ・ルール! (単行本)
問題が起こる->原因を探る->問題の本質を探る->解決策を練る機械化、IT化でプロセスのどこかで状況が「良い方向に」変わる。 でも、全体としては「不都合」が起きる。それは、改善されたことに「ルール」が不適合を起こしているからだ。 しかし、ルールを変えるには、皆の合意がいる。えてして、SEはルールをいきなり変えようとして、反発を食らう。 皆の理解の水準をあわせ、攻撃の的にならないように、少しずつ、合意を取りながら、説明をする。この皆の合意を取る「パフォーマンス」が大事である。 この本では、このプロセスが実にわかりやすく物語になっている。物語なので印象として、残る。 今更であるが、必読。繰り返して読むべき。ネゴシエーションの参考にもなる。
11 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
IT業界の今後のあり方を提起している,
By
レビュー対象商品: チェンジ・ザ・ルール! (単行本)
長年IT業界で暮らしている私が思っていたモヤモヤが晴れた。この業界では昔から、お客がやりたい意図を本質的には理解はせずに、機械(コンピュータ)の動作に置き換えて、お客が意図を達成できるかどうかは別の問題だ、と逃げてきたし、そうやって責任回避するべきである、と考えているインテグレータは少なくない。社によっては、そこで出た顧客の不満こそが次のビジネスにつながるといってはばからない。 しかし著者は、お客のやりたい意図を技術で解決することが本来提供するべき価値だろう、という。お客にWinさせよ、と。 従来の甘えた手法ではお客に飽きられているのは日本も同じだ。システム・インテグレーションの要件定義といって顧客企業のためなのか、そこで働いている間接部門にラクをさせるためなのかわからないようなことばかりやって、効率の悪いテクノロジーで膨大にプログラムを書いていてOK、とされた時代は去りつつあると思う。この小説でERPが取り上げられているのは、序文にもあるようにネタのケースがあったからに過ぎないと思う。
10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
IT革命を享受するために前時代のルールを見直せ,
By
レビュー対象商品: チェンジ・ザ・ルール! (単行本)
ゴールドラット博士によるTOC啓蒙ビジネス小説第3弾。今回は、ERPソフトを販売する会社が舞台で、その業績の驚異的な伸びに陰りが見え、自社の製品や開発プロセスを見直すだけでは直面する課題に適切に対応できなくなり、顧客も巻き込み既存のビジネスモデルのパラダイムチェンジを実行していく様子を追っていく物語。登場人物も業界の将来を見通すビジョナリーリーダーありITの天才あり、いかにもこの産業にありそうな人々が魅力的に描写されており、内容も前作通りスピーディなストーリー展開となっていて楽しく読み進めることができる。個人的には、経理の仕事をしている職業柄「ERPソフトの導入に多額の資金をつぎ込んで、その結果会社の業績にどのように影響するのか?」という素朴な問には過去何度か遭遇し、その都度回答に窮していた経験をもっているので、「バリューを実現するためには、”テクノロジーは必要だか、それだけでは不十分”」で、「チェンジ・ザ・ルール」しなければならないという本書の主張は説得力が感じられる。では、どんなルールをどのように変更しなければならないのか?それは、既存のテクノロジーによって規定されていたルール、例えばビジネスフローや意思決定方法、延いてはビジネスのやり方や市場の見方を、ITによって開放してやり、すべてのビジネスをデジタルのスピードに変えていくことだ。その変更すべきルールを見つけ、またどのように変えていくのかということを考えるヒントがここに書かれている。
あなたの意見や感想を教えてください: 自分のレビューを作成する
|
最近のカスタマーレビュー |
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|