16 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
際立った描写と細かい時代考証, 2010/1/10
レビュー対象商品: チェンジリング 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD] (DVD)
1928年というから世界恐慌の前年である。その年にロスアンジェルスで起こった少年の失踪事件とそれによってあぶりだされたロス警察の不正、それに翻弄される一人のシングルマザーの戦いを描いた作品である。
まず非常に行き届いた時代考証、町の風景や衣装のほか、電話会社の機械のひとつひとつやローラースケートで社内を移動するシーンなどそういったところが細かい。
アンジェリーナ・ジョリー、非常に落ち着いた演技である。ストーリー上声を荒げる場面や感情がほとばしる場面もたくさんあるが、それらがまったくわざとらしくなく自然である。
商業的なイメージを振り払い一人の母親を見事に演じきった。
ストーリーは非常に悲しい。そして当時の警察の対応、信じがたい嘘によってヒロインが追い詰められていき、そして最後には...母親たちが見るとその苦しみが自分に伝わり非常につらいであろう。
この作品で描ききらなかった少年の嘘のなぞー一応は筋がとおったことにはなっているが様々な疑問が残るーは真実をこだわる監督だからこそ、明かされていない謎には言及しなかったのだろう。そして悲しいながらも一抹のほんのかすかな光を感じられるラスト。
こころになんともいえない余韻がのこりいい映画を観たという気持ちになった。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
“取り換えっ子”の母親の恐怖と、女ひとり親への蔑視, 2010/10/6
レビュー対象商品: チェンジリング 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD] (DVD)
チェンジリングとは、私の記憶が確かなら「妖精の取り換えっ子」だったと思う。
「妖精」というと美しいイメージがあるが、この場合は土鬼のような醜い生き物。
行方不明になった息子が他州で保護され、実に5ヶ月ぶりに帰って来る。
多くの新聞記者に囲まれて汽車を迎えた母の前に降り立ったのは、全くの別人。
しかし動転した母親は刑事に押し切られ、自宅に連れ帰ってしまう…
これが実話だということを信じたくないほど、警察の暴虐ぶりが凄まじい。
警察の間違いを主張した主人公は精神病院に収監され、そこで会う多くの女性が、
根拠もなく、また正式な手続きも踏まずに監禁されていることを知る。
一番印象に残ったシーンは、何度も「真実の息子の捜索」を陳情に来る母親に、担当刑事が
「あなたは子供がいない間に味わった自由が忘れられず、子供が邪魔になったのだ」と言い放つ所。
必死に我が子の消息を掴もうとする母親に向かって、最低の言葉だろう。
日本では特に、実の子供を虐待した場合、男性より女性の方が重罰が下される傾向がある。
「母性神話」というか、「母親は子に対して父親より重い責任がある筈」という偏見から来ている。
この物語の後半に出てくる夫婦は、主人公と同じく息子を捜しているにもかかわらず、
主人公のような悲惨な扱いはされていない。ここに「ひとり親」への偏見も伺える。
おそらくこの時代に、警察という強大な組織が、ひとりの女性を虐げる事など容易かったのだろう。
男性の庇護のもとに無い、または男性の支配下から脱出しようとした女性を狙い撃ちするのは。
主人公が精神病院で出会うのは、そういう女性たちである。
そして彼女らを治療という名の暴力で押さえつける病院スタッフにも、女性がいる。
テーマ選びもその映像化も、非常に素晴らしい映画だと思った。
たびたび行われる記者会見のシーンで、アンジェリーナ・ジョリーの真っ赤に塗られた唇を見ながら、
「子供が行方不明の母親があんな濃い化粧をするなんて」と、日本では絶対批判されるだろうな、と思った。
泣き濡れてやつれた素顔の母親を期待する視聴者。それも女性への差別だと思うのだけれど。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
どうなっていくのだろう、と思いながら観る, 2010/5/13
レビュー対象商品: チェンジリング 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD] (DVD)
子どもが行方不明になるだけでも身を削られるのに、
自分の子どもではないとの主張が通らず、
判断能力が欠如しているというデマまで流され、
収容先の病院で崩壊寸前までいたぶられたら………
これが事実に基づいているとは。
結末がどうなるか、全く情報を入れずに観たので、
母親がどうなるのか常に不安を感じながら観る事になった。
会話の一つ一つが身につまされる。
無関係な訳ではなく、すぐそこにあるかもしれない現実。
観終わった後も、しばらくは胸の中に波紋が拡がる作品。