BD+DVDセットでも入手しやすくなったものだ。
クリント・イーストウッド監督の最近の作品は傑作ばかりだが、本作も期待を裏切らない。彼の監督としての底知れぬ才能、つきないアイデアには感嘆するほかない。大恐慌の時代の実話というのが信じられないストーリーだが、実話ゆえの重みにたじろぐ。息子に起こったことの真実を知りたくて、腐敗した権力と戦う勇気あるヒロイン役のアンジェリーナ・ジョリーの熱演が素晴しい。女性の権利がないがしろにされがちだった時代の壁に、全身でぶつかっていく様は圧巻。その演技を引き出し、映画全体のトーンを最初から最後まで見事にコントロールする監督の力量には惚れ惚れする。監督は作品によっては白黒で撮影する等、画面の色彩の選択に工夫をこらすが、本作も大恐慌時代のロサンゼルスという舞台の雰囲気を伝える絶妙な色彩感覚で画面が統一されている。これは是非各自観て下さいというしかない。
市電が走る戦前のロサンゼルスの街の再現も本作の魅力の一つ。警察のでたらめぶりとあわせて、なるほどハードボイルド小説の主人公フィリップ・マーロウが活躍し、映画「チャイナタウン」の舞台になるのはこの街しかないことに納得がいく。60年代の西海岸文化の中心地としての明るいカリフォルニアのイメージしかない人には、陽光に恵まれながらもダークな天使の街の裏面を知るよい機会になるだろう。そして人々がこの街で正義の実現を求めた姿、ヒロインが最後に希望をかいまみる場面には深い感動を禁じえない。