民族学序説などという題名で 学術資料として とっておくものなのかと思ったがとりあえず読み始めてみるとロシアを相手に戦い抜いたチェチェン、 不屈のチェチェン、トルストイの名作ハジ・ムラートの民族の あのチェチェンの人がその歴史や慣習を愛情を込めてしかもひいきの引き倒し的な愛国主義とは無縁の穏やかな口調で語っている。 おもしろいのは 血の復讐をやめさせることがあるなど 真に人道的というのか 自然の掟を守るというのかそうした知恵が具体的な例であげてあること。 楢山的な老人を捨てる風習がやめになった経緯や たばこがチェチェンの男のステータスにもなったいきさつ、そのほか 生きる知恵もあれば チェチェンの弱さ、ソ連の配下にはいったときの 粛正の嵐がなぜ吹いてしまったのかなど 真摯な事実認識と悲しみを込めて分析していること。 ハッサン・バイエフというチェチェンの外科医が書いた「誓い」に彼が少年時代 父親に連れられて山に入り そこでチェチェンの慣習、生きる道を説かれた あの口調を思い出させるしみじみとチェチェンの生き延びる道を説いている不思議な力に満ちた文章だった。チェチェンのことだけでなく精神のあれている現代人全体にとっても深く胸に迫ってくる名文。