オープニングのタイトルバック、青い水と赤い水が表裏一体で溶けていく様子は、そのまま江口洋介演じる査察捜査官、春間と脱税の天才、“カリブの手品師”村雲修二を演じるARATAにそのまま当てはまる。
劇中でも、人によっては暑苦しい、でも確実に温かい“兄ちゃん”な江口洋介の個性と、文字通り爬虫類のような冷血動物を思わせる風貌、そんな風貌に似合わず声に凄みがあるARATAの役者としての個性が存分に活かされている。
脱税の手口とそれに立ち向かう査察官の対決に終始した方がいいという人もいる。が、それだけでは飽きてしまう視聴者もいたと思う。このドラマの肝はやはり、村雲の義手に隠されたその、あまりにも暗く悲惨すぎる過去にある。
彼の今まで背負ってきた苦しみと、彼が金目的で飛行機を落とした(落ちる結果が予想されていた)事によって、妻を失い娘との絆も失いかけた春間の苦しみは最終回で表面化、激突する。
「あり得たかもしれない人生に希望を持ってしまう。人を苦しめるのはいつもそういう希望なんだ。欲しくて欲しくて眼を細めて見つめる希望の灯火なんだ…」
春間は憎しみを超えて自分の追っていた相手の事を初めて完全に理解し、思わぬ行動を取る。
「泣いた赤鬼の話を知ってるか。誰も悪くないのにどうしょうもない。俺もお前も泣いた赤鬼と同じだ。愛されたくて愛されたくて泣いた赤鬼だ。でも、生きるしかない。生きるしかないんだよ!」
この時の江口洋介の演技は思わず画面に向かって「熱いっ熱すぎる」と叫んでしまうぐらい感動的。
福山は「龍馬伝」で兄ちゃんは「土曜ドラマチェイス」だようっと同格なぐらい良い仕事してる。いい役者さんになったものである。
そして、訪れる物語の結末はあまりにも悲しすぎる。が、唯一春間にだけはその苦しみを理解してもらえ、残された彼の赤ん坊が「パパ」と口にし出す様子にはやはり、かすかな希望が感じられる。
菊池成孔さんのエンディングテーマ「退行」も母親の胎内にいる赤ん坊のイメージのような、退廃的で魅惑的、悲しみに満ちた、ドラマの本質を如実に表わした名曲。いつまでも耳に残ってあとを引く(惹く)。