「ダークナイト」は2時間30分余り、憤怒と悔悟、哄笑と苦悩のマグマを噴出させているような重厚で深遠なクライム・アクション。シリーズ史上屈指で、今まで以上に、鑑賞後も心の奥底に沈潜する傑作、まるで映画を2本分観たようなへビィな感覚に捉われる。
"バットマン"は闘い毎に傷つき、去っていった者(レイチェル)を想い、より"ブルース・ウエイン"として生きるべきか葛藤する。
映画の核になるのは、やはり"ジョーカー"。より現実的な都市景観として生まれ変わった未曾有の犯罪都市ゴッサムに蔓延する暗鬱で邪悪な空気を総て吸収したかのような強烈なキャラクター。誰もが感じる取り憑かれたようなヒース・レジャーの鬼気迫るパフォーマンス。けたたましく笑うコミック的なかつてのジャック・ニコルソン版とは違い、今回のジョーカーは、極めて深謀怜悧にして凶悪、冷酷非情。バットマンやトゥー・フェイス・ハーヴェィが、光と闇、善と悪の境界で苦悩するのに比べ、その世界観は明解。正に、死をも恐れぬ自らの運命をも哄笑するアナーキスト、破壊神の異名に相応しい確信犯ぶりに、底知れぬ恐怖と強靭さを感じる。根源的善人のゴードン本部長も、茫然と立ち尽くすしかない。つまり、闘う前から、"真の意味"で勝敗は決しているのだ。
主要キャストは皆それぞれに見せ場が用意されている。前作から唯一配役が替わったレイチェルも、今作でのその"役割"を考えると、演技派のマギー・ギレンホールで正解だった。
激しく緊迫感溢れる映画ではあるが、同時に、詩情的な悲しみも感じる。私は劇場で2回観たが、初見時には目に留まらなかった007映画のようなガジェットSF的な要素も魅力だ。そして、展開は思いの外速いので、何度か繰り返して観たいが、映画史に残る"不敵なツラ構え"に、今作でしかもう出遭えないのが、返す返すも残念でならない。
それにしても、つい先日まで劇場公開していた筈なのに、年内にDVD発売決定とは。「タイタニック」に次ぐ歴代2位の興収を記録中のアメリカ本国では、オスカーレース参入の為、09年1月に改めて再公開との話もあるのに、、、。一刻も早くホーム・シアターで再見したい衝動に駆られるが、ちょっと、ね。もちろん、Blu-ray・Specの動向も気になる処だ。