本書は、進化論で有名なダーウィンが行ったミミズについての観察や実験をたどった、ユニークな「科学絵本」である。ビーグル号に乗船しての世界周航から帰国してまもなく、ダーウィンはイギリスの田園地帯の肥沃な土壌を生み出すミミズの働きに興味を持つようになる。彼は何匹ものミミズを解剖して、飲み込まれた土が細かくくだかれるプロセスを解明する。次に、人手を介して、ある一定区画内に現れるミミズの糞を入手してそれを平らにならして厚さを測ったり、30年近く前に白亜をまいた牧草地を掘り返して、「たいらな土地では、ミミズが石を埋める速度は1年あたりB6ミリ前後」との結論を出す。その実験方法の素朴さや、事実を求める忍耐強さを読むと、ダーウィンの人となりに親しみを覚えてしまう(杉田比呂美氏のとぼけた味の絵の影響もあるかもしれないが)。ふつうの子供むけの本ならここでお終いだ。だが、この絵本の著者は、「1年に6ミリ、30年で17.5センチなら、150年後のいまはその5倍で85センチから90センチ!」と考え、現地の協力者の助けを借りて、ダーウィンが住んでいた家の裏庭近辺を掘り返す許可を得て実行に移す。そして、その結果は……。 ダーウィンが導き出した結論に基づいてひとつの予測を立て、実際に調査した結果、著者にとって(そしてダーウィンにとっても?)意外な事実が現れたことが正直に述べられている点が本書のミソである。そこには、著者が感じたと同様に、若い読者にも「たしかにおかしい」「なぜだろう」と感じてもらい、彼らの好奇心を刺激したいという願いが込められているのだろう。なお、本書の参考文献の一覧が、裏表紙の見返しの部分にあえて目立たないように(?)白抜き文字で記されているので、興味のある方はお見逃しないように。