・「ダーウィンのジレンマ」とは、小さくてランダムな遺伝的変異の蓄積がどうして統合的な新規形質に結びつくのか、という疑問のことである。
・このジレンマを解決し、進化理論の欠陥を補完させるアイデアとして本書で打ち出されるのが「促進的表現型変異理論」である。
・この「理論」を数行で要約するのは難しいが、あえて単純化するならば「生物には変化に対する適応力があり、それが制約の中での自由度となるために、総合的な新規形質が進化しやすくなっている」というものである。
・その考え方に異論はない。しかし、私の理解が正しければ、「階層性」や「拘束」があることで成立する部分的な「適応的可塑性」により「進化が上手くなってくる」というアイデアは、クリストファー・ウィルズ(「遺伝子の知恵」)、ブライアン・ホール(「進化発生学」)、ショーン・キャロル(「シマウマの縞 蝶の模様」)、池田清彦(「さよならダーウィニズム」)などでも繰り返し言われてきたことである。
・本書の新鮮な点は、生化学や細胞生物学が進化の問題とどう関わっているのかについて整理した点であろう(これらの分野と進化生物学との接点はつい忘れがちなので、私はとてもためになった)。
・残念な点は、文章(とくに生化学や細胞生物学に触れているあたり)が非常に読みにくい点である。もっとも、本書は要点の繰り返しがとても多いので、辛抱強く読みすすめればポイントを理解し損ねることはない。