まさしく書名のとおり、ダーウィン『種の起源』に何が書いてあるのかを紹介した本。ダーウィンや進化理論一般についての本は多くあるし、『種の起源』の出版にまつわるエピソードなどをまとめた本もある。だが、『種の起源』の内容そのものをわかりやすく解説した本は貴重だ。この本を読むのと読まないのでは、『種の起源』の内容の理解度がまったく違ってくると思う。実は私も『種の起源』を読んでみたが挫折した口である。正確には、ひとおとり読んでみたが、理解できない部分だらけだった。だが、この本を読んで、「そういう意味だったのか」と腑に落ちた点がたくさん見つかった。専門家の目にどう映るのかはわからないが、私のような素人にとっては非常に有益な書であることは間違いない。著者はサイエンスライター兼イラストレーターだが、学者にはこういう本は書けないだろう。とはいえこの本は進化理論をアバウトに説明したようなあるふれた代物では決してない。著者自身の日頃からの自然観察経験を存分に生かした博物学的な書でもある。また、進化理論につきものの「科学であるかないか」という問題にもかなりつっこんでいる。それは、ダーウィンが膨大な観察と実験を行った実践家であったとともに、科学理論のあり方を模索する哲学者でもあったことを受けているのであろう。この本を読んで、『種の起源』では進化理論に対してわれわれが抱きそうな疑問や批判がたいてい論破されていることがわかった。一方で、ときにダーウィンが「わからない」とはっきりと認めていることも印象的だ。ダーウィンを批判することは揚げ足取りか想像力の欠如だと思えてしまうほど、ダーウィンの存在が大きく思えた。