ダヴィンチ編集部となっているが、実質的には、ダヴィンチに掲載された書評家の江南亜美子の連載と文芸ルポライターの岡田芳枝の記事をまとめたもの。ダヴィンチだけあって、採り上げている作品の幅も広く、用例としても適切で、昨今の受賞作やヒット作の全体的な傾向と特徴がコンパクトに概観できる。
もっとも、ダヴィンチ好みに、本格派純文学より奇矯な一発屋ものに偏っている。岡田のインタヴューのまとめ方は、いつもながら秀逸で、的を外さない。一方、江南の連載した小説の書き方講座は、あまりにもシロウトっぽい思いつき。人に書き方を教える以前に、致命的に物書きとしての才が無い。「いわゆる「負け犬」っぷりがはなはだしい30代女性の奮闘ぶりが、悲壮感のない、洒脱なナレーションで語られている点が大きな魅力になっていますが、」(P.40)のように、どこもかしこも無神経な「が」の氾濫。できた作品を考察する視点で、人に作り方を説くのは無理だ。登場人物を増やそう、古典をパクろう、などという指南は、学生向けの一般教養の練習問題ならともかく、本気で小説を書こうとしている人間には有害無益。よほどの力量がないと、こんな手法を使ったら、話が水っぽくなるに決まっている。
やたら数ばかり読んでいいのは、書評家だけ。いくら書かれた文字の表面づらをなでてみても、何も自分では書けるようにはならない。自分で書きたいなら、ここに採り上げられているような限られた数の特徴的な作品を、一字一句まで徹底的に吟味して、そこにしかけられ、はりめぐらされた高度な技をうまく自分のものとして盗むことの方が大切だと思う。