レオナルド・ダ・ヴィンチは芸術家であり、科学者だったという話はすでに良く知られているので今更解説する必要もないだろう。
本書は科学者、それも機械技術者としてのダ・ヴィンチの功績を分析、実証していて、機械系技術者にとっては非常に興味深い内容となっている。
まず驚くのは、ダ・ヴィンチが残した手記に、現在の機構学の書に載っているような基本的な機械要素が殆ど描かれていたという事実。
そして、それは自身が設計した自動機械―ロボットを構成する機構の研究のためだということ。
基本的な機械要素から自身で考案し、それをやはり自身で改良し、組み合わせて複雑な機械を創り出すということが如何に大変なことか。
それまで全くなかった概念を創り出して応用したダ・ヴィンチは天才であり努力の人だったと改めて感じる。
また、本書ではダ・ヴィンチが設計した自動化機械のうち、自動走行車、機械仕掛けのライオン、鎧の騎士を実際に再現する試みを行っている。
ダ・ヴィンチの残した手記は散逸して全て残っているわけではないが、可能な限り集めた上で新たな解釈から構造を読み解いていく。
気の遠くなる作業だが、携わっていた人たちはスケッチからダ・ヴィンチの息遣いを感じていたことだろう。
手記に残された技術は、当時としては画期的なものであったはずだが、現代の技術を凌駕するものではない。しかし、ダ・ヴィンチの研究に対する姿勢は、逆に恵まれ過ぎている我々が本来持たなくてはいけない真摯なものだと感じた。