著者は第一章で、『四聖諦=苦・集・滅・道』の意味を三転(=見道・修道・正覚の三段階)で理解する方法を述べる。
第一段階は、「これが苦であり、これが苦の原因(i.e. 集)であり、これが苦の滅であり、これが苦の滅に至る道である」という理論的理解(i.e. 見道)である。普通の仏教書ではこの説明で終わることが多い。
第二段階は、「小さなこと一つでもよいからそれが苦であることを完全に知るべきであり、認めることができた小さな苦の原因は捨て去るべきであり、苦の原因を捨て去って小さな苦が止滅したことを実際に体験すべきであり、苦の原因の止滅に成功した方法を他にも応用すべきである」という実践的理解(i.e. 修道)である。最近有名になったヴィパッサナー瞑想もそのための訓練方法の一つである。
実は見道において、一つでも苦の止滅を体験すれば「シュダオン(預流)」という聖者の流れに入る。どんなに小さなことでも苦の止滅を体験した途端に、初めて自転車に乗れた時のような感動に襲われるので、確実に自覚できる。その後は、修道で小さな苦の原因を一つひとつ止滅しながら、「シダゴン(一来)」や「アナゴン(不還)」という高位の聖者に進化する訳である。
最後に、実践的理解の説明で「苦の原因を捨て去る」というのは「分かっちゃいるけど止められない」ことである。例をあげれば食べ過ぎて太り過ぎるような場合である。著者は “貪りを捨て去るというのはそれを拒否し、打ち消すことではない。それをあるがままにあらせることなのである。なぜなら、ある時、偶発的に生起した心の状態はいずれは必ず消え去っていくからだ”(p.23)と述べる。これを読めば分かるように、一時期ブームとなった「レコーディング・ダイエット」こそ、苦の止滅を実体験できる最も近道の一つなのである。