ここで紹介されているのは、日本で一般に流布されている小本(略本)ではなく、大本(広本)です。経文の本体は同じですが、大本ですので、経文の前後に数行ずつ文章がついています。漢文からの訳ではないので、漢文や書き下し文は掲載されていません。ですから、おなじみの“あのくたらさんみゃくさんぼだい”といった日本で発音されている言葉に対するダライラマの解釈がどれにあたるのかは、漢文を手元に別に置かないと困難です。文章は平易で、仏教の基礎知識なしに理解でき、入門というにはふさわしいでしょう。この本では、般若心教の理解には“空”の理解が不可欠であるとし、“空“の説明をしていますが、アメリカで行われたセミナーの訳であるため、深みには当然欠けます。この本では、ダライラマはナーガールジュナの”中論“を数箇所で引用していますが、もっと深く”空“の思想を知りたい人には、中村元博士の詳細な解説付の”中論“の名訳である”龍樹“を読まれることをお勧めします。