企業生き残りに喰うか喰われるかの企業経営者達の宿命と、男と女の過去、勧善懲悪的な話の展開は面白い。大手アパレルメーカーのラトゥール社、高級ブランドのクリスチャン・ガスティナと業務提携し、破滅的拡大を目指す超ワンマン会長の能勢龍次郎。東証二部のインナーメーカー、マイ・コーポレーション社の伝説の起業家社長、桜川舞子。この二人が織りなす、男女関係、師弟関係、切磋琢磨の関係、企業サバイバルの関係、最後は熾烈なやればやり返す非情な展開が面白い。このラトゥール社、実力売上600億円から、中期計画は900億円で折返し、長期10カ年計画では1200億円をぶち上げた当時の営業担当常務、能勢は5年でなんと売上1000億円を達成。尾崎前社長を追い出し、社内の天皇になっていく。最高経営会議、別名御前会議がワンマン意思決定機関で、取締役会は単に議事録作成機関。一方で舞子は悲惨な家庭環境で育ったが、祖父のインナー縫製下請工場を東証二部にし、その後も順調に業績を伸ばす。双方の過去から現在への話の展開は早く、無駄なく早いテンポは寧ろ作品としてはもったいないくらいだ。次の第二次10カ年計画では血迷ったか売上2400億円の目標、その無謀さに能勢会長も資金繰り、資金調達面で怪しくなり、裏金作り、不正会計という倫理面で足を踏み外していく。後半はTOB、LBO、MBOというM&A抗争の話になっていくが、その説明がくどくなり、その内容披歴にややウンザリする。もし解説したいなら(注)を設けた方が良かった。またラトゥール社の経営戦略担当の矢島専務は買収の責任者として、資金調達の話で「ノン・リコースって何?」、「プロキシーファイトって何?」では情けない。また登場人物の多い偶然性、例えばある女性の初めの彼が能勢の長男、次に知ったのが舞子の長男、舞子の2番目の子は誰々の子、その他色々という具合だ。最後にファニーメイ、フレディマック、サブプライムローンの記述までは必要ないと感じたが。