最初に言っておくが、本巻のエピソード自体とストーリー展開は申し分ない。ここだけなら星5つレベルである。予想以上に巧ラヴだったのね、という小町の心境を軸に、栞も、ヒナでさえも想いをぶちまけていく。殴りながら想いを告げるといった珍しいシーンもある。巧自身の想いが定まっておらず、何となくなし崩しっぽい雰囲気も漂うが、最終的には“桃井家”という括りで纏めたのも悪くはない。本当はこの方面にもドラマを設け、相応の決着をつける道筋も作者の中にはあったかもしれないが、今回は致し方無しといったところか。前巻の引きから小町の危機を匂わせつつ、もう1回り大きな問題へと発展していくストーリーも良く出来ている。ヒナの巧ラブ全開なセリフも面白く、ここまでは本当に良く出来ていたと思う。
しかし、今回の敵(個人)の正体に始まり、ゲームという名の非現実世界の真相から敵側(組織)の正体、暗躍の目的、それに何より『黒いアイテム』って結局何だったの?という部分に至るまで、シリーズ全体に関わる根幹が何一つ解明されていない不可思議さがある。広げるだけ広げた風呂敷を大慌てで包もうとしたけどいろんなモノがポロポロ落ちている、しかも拾うことなく行っちゃった……という感じで、いかにも「さぁ、これから!」というところで終わる、典型的な強制終了パターンと言える。見切りをつけたら多少強引でも3巻までで終わらせるMF文庫Jの悪癖(?)が、今回も如実に出た格好であろう。ただし、レーベルばかりに責任があるとも言い切れず、ここは作者にも今一度奮闘してもらい、次作でより一層の楽しいシリーズを目指してほしいものである。この作者のファンなので期待している。