戦時中のダバオでの敗走の様子が知りたくて本書を手に取ったが、他の資料も参考にされているとは言え、当時幼少であった著者の記憶を元に書かれており、後半は、母の実家近くの信州に引き揚げてきてからの貧困と差別と自給自足の生活について、半分以上の紙幅が費やされているのもあり、期待はずれであった。
マニラ麻移民の為のミンタル病院に、赤十字から派遣されてきた父母が結婚し、戦時中スパイ扱いされた父は日本兵に殺され、自身ら家族も殺されそうになるも小隊長に助けられ、空襲を避けながらの逃避行、米兵に投降して収容された飢餓状態の収容所生活、病人や怪我人の死、とここまでで全体の約半分。
セブ島に終結した第201海軍航空隊飛行隊(約100機)が、米艦上機群の波状攻撃を受け壊滅した、ダバオ誤報事件や、父親が日本へ強制送還され、ダバオ周辺だけでも千名をこえる孤児達が母親と共に置き去りにされ、日本軍が戦時中にフィリピン人に対して行った残虐行為の報復の対象となり、80年代にようやく日系人として名乗りを上げることができるまで、その多くは日本人の血を引くことを隠し、その証拠を全て捨てて、満足な教育も受けず、最下層の人々として隠れるようにして暮らすしかなかった件などに全く触れられていないかったのは残念。