「行動経済学」という分野を切り開いたダニエル・カーネマンのノーベル賞受賞記念講演録と、自伝、そして一般読者向けに書かれた論文を収めたもの。
特に注目したいのは、第4章の幸福の指数化としてのU指数の提案である。
カーネマンといえば、人は必ずしも経済学でいうところの合理的な行動をとることはないという新境地を切り開いた経済学者という認識を持っていたが、もともと心理学が専門であったということに納得がいく。
ただ、彼も今までの経済学をすべて否定しているわけではなく、人が時として示す不合理な行動を研究し経済学を発展させたというところが正しい。
高度経済成長を経験した日本と今まさに発展しつつある中国のいずれも、その国民の幸福度は増していない。中国ではむしろ下がっているという。
それは、人間の満足度は変化に対して敏感であるがその状況にいると満足度は下がってしまうという著者の研究(プロスペクト理論)からもいえるものである。
ブータンを始めイギリスやオーストラリアなどの国では国民総幸福度という指標を使い始めているが、著者の提唱するU指数を発展させると、もしかしたらわれわれの世界観はまったく違ったものになるのかもしれない。