スカイ・クロラシリーズの第3弾。
今回は草薙水素の戦闘時代が描かれます。
飛ぶことだけを夢見て、飛んでるときだけに『生』を感じる。
敵を落とし、仲間が死に、それでも戦う。なぜなら空に飛ぶことが自由でいることを実感できる空間だから。
スカイ・クロアシリーズで一環して語られている、この感覚。
飛ぶ=自由。
キルドレとして一生大人にならない体を与えられ、死と生のすれすれの空間で戦い続けているにもかかわらず、『死』に対して重く捕らえるところはなく、自由に飛びまわれるために余計な重さをそぎ落とした戦闘機散香のように、文体もただ飛ぶ=自由についてのみ純粋に描かれている。
だからこそ、負傷し翼を失った戦士キルドレ草薙の療養生活は、いかに憂鬱で不自由で、砂漠の中で行き場所を見失った旅人のように空虚感が浮き彫りになってくる。
森 博嗣の文体は、自由な空を飛び回って生き生きしているときこそ、短く、詩のように瞬間瞬間を表現している。
その反面、地上に降り立ち、人間や他の仲間と接する時間は機械のように冷たく、心がないようにも見える。
そんなキルドレだから、普通の恋などしたことがない。だからカンナミに出会うことで、今までにない不思議な気持ちに気づかされたのだろう。
時はスカイ・クロアより以前。草薙を形成する人格のひとつがここでも明かされる。