同じ団地の隣家に住む風変わりな女の子の世話を押しつけられた男と彼女との、ひと晩の交感を描いた「タンノイのエジンバラ」。3人姉弟と義理の母親との確執を描いた「夜のあぐら」。半年前に結婚した主人公と妻、半年前に離婚した主人公の姉の3人組によるバルセロナ観光の物語「バルセロナの印象」。そして、パチンコ屋の景品係としてアルバイトをする主人公女性のバイト仲間との日常にスポットを当てた「三十歳」。現代家族と個人の関係のありようが、長嶋有ならではの独特の視点と状況設定によって描かれる。
作者の筆が描き出すのは、失業中の男と少女の束の間の疑似家族的な関係であり、普段は疎遠の姉弟が目的を達成するためにいっとき結束することから始まるドラマであり、海外という逃げ場のない空間での肉親者同士の緊張関係であり、著者自身の年齢にも重なる30歳という微妙な年齢に達した女性の内面の物語である。
長嶋文学の核心には家族小説の枠組みがあるが、この短編集でも家族ならではの微妙な距離感や感情のせめぎ合いが、物語のバリエーションを形づくる動機となっている。漫画家の高野文子による印象的な挿画と本文イラストも、現代的な技巧性に満ちあふれた作品世界にフィットしている。(榎本正樹)
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なったりする。
私は通ではないので知らなかったが、タンノイのエジンバラとはイギリス
タンノイ社というオーディオメーカーのことで、エジンバラとはそこで
製作されたAV機器であった。この製品は実在し、インターネットでついつい
その実像を眺めてしまった。昨年で販売中止となったらしいこの勇姿も
登場するこの短編は、淡々と日常を描いているようでしっかりとした
後味が読者には残ると思う。
自分も今や立派な30代。なにか大きな目標をもって進んだことのない人間
だけに、どこかしら主人公には励まされるような気がしないでもない。
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