同性カップルに育てられた「タンゴ」は、親に捨てられた子どもである。動物園の飼育係がその、実の親ペンギンが孵すことを放棄してしまった卵を、ほかのカップルがやるように家族を作ろうとしていたオス同士のカップルに預け、おかげで生を受けたタンゴは二人のパパに見守られながらすくすくと育つのだ。
「ここには社会通念上望ましい親子モデルは見出せない」と、子どもから本を取り上げてしまう大人も、いるのかもしれない。人間社会では同性カップルへの偏見があることはもちろん、育児放棄(や生活上の困難から子と別れる親)の現実にも、薄っぺらな倫理をふりかざしただけで思考停止し、行動できないものだから。でもこの絵本を読むと、大切なのは「あなたは誰と生きたいか」だと、思えてくる。家族を作ろうとするカップルへの共感と、守られるべき命に対する配慮から、機転をきかせた飼育係がとても素敵だ。
思えば人間は飛べない鳥よりも不自由な思考に縛られて生きているのだろう。しかしちょっと羽根の名残りをバタ付かせ小首をかしげてみれば、本当に大切なことが見えてくるのだと、ペンギンたちの姿を通して、この本は優しく示唆する。巷間に満ちている、両親がいない(揃っていない)子ども/通念的でない家族形態の世帯/性的少数者に対する偏見や差別に対して、おかしいと考えられる力を持つ子どもたち/大人たちが育つように、柔らかな入り口になっている。
僕は母子家庭に育ち、いつも周囲からの低俗な好奇の視線に辟易していたので、この本の「イレギュラーな家族への湿り気のない共感」はとても心地よかった。こんな本もあることで、ホッとする子がいることは疑う余地がない。もちろん大人でも、こうした物語で癒される人はたくさんいるのだろう。
最近このようなマイノリティ視点の、しかしマジョリティを締め出さない良書が増えたような気がするが、とても喜ばしいことだと思う。