ザ・タロー・シンガーズは、関西を中心として活動している20名ほどのメンバーによるプロの室内混声合唱団です。
指揮者の里井宏次氏は大阪音楽大学助教授として、音楽を学んでいる学生に合唱指導もされている方です。
この武満徹作曲の混声合唱のための「うた」は、「小さな空」「死んだ男の残したものは」「さくら」「翼」など説明が不要なくらい多くの合唱愛好人に親しまれている12曲の合唱作品からなっています。武満徹自身の作詞が4曲、谷川俊太郎の作詞が4曲あり、メロディも歌詞もそれぞれ個性的で美しく珠玉の作品集だといえます。
最初に感じたことは、とても日本語が美しく、フレージングがたっぷりと大きくとってあるので、歌詞の持つ伸びやかさが、紡ぎ出される音楽によって明確に描き出せている点にあると思いました。
冒頭の「小さな空」の聞き手をノスタルジーの世界へ誘うような大きくて伸びやかな合唱は、とても好感が持て、多くの人に聞いてほしいと願う仕上がりになっています。子供の頃の情景を思い浮かべながら、慈しむように大切に作られた小品です。ロマンチストの武満徹の性格が、歌詞の随所にうかがえます。流れるようなメロディは懐かしく、少し淋しげな旋律を持っています。子供の頃の真っ暗になるまで遊んだ幼いあの日の情景が目に浮かぶような曲です。
武満徹の感傷的とも言える懐かしい音楽世界を、透明感溢れる声質とピッチの整ったハーモニーで上質な合唱作品として描き上げています。ア・カペラですので、何よりも正確で繊細な表現が要求されるわけですが、小人数ゆえ、各パートの線が明確で、全体像もはっきりと再現されています。
惜しむらくは、ライヴ録音ゆえ、観客の雑音やざわめきが時折マイクに拾われているので、気にする人もいるかもしれません。一方ライヴ特有の緊張感と昂揚感にも包まれており、まるでコンサート会場にいるような臨場感すら感じさせる演奏だと思いました。