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また、タロットの歴史を論じたところでは、かつて澁澤龍彦氏や、種村季弘氏が紹介したヨーロッパでのオカルトに関するエッセイを、より具体的かつ詳細にしたような話も。錬金術、カバラ、薔薇十字団、メスメリズム、神智学……などその手のオカルト系の話が好きな人ならば、タロット・ファンではなくても面白く読めるはずです。ただ本書を読むかぎり、著者自身はあまりオカルト好きではなく、そういったことには距離を開けているようにも思えましたが。
なにはともあれ、今後、タロットについてなにかを語る際には、この本を避けて通ることはできないのではないでしょうか。値段は少し高いですが、日本で出ているふつうのタロット本を束にしても勝てないだけの情報量が盛り込まれているので、買って損はしない一冊です。
わたし自身は、タロットは好きで何冊か本を読んだことがありましたが、ずっとタロットと占星術の対応とかが、なんでそうなっているのかずっと疑問でした。そこのところについても細かく書かれていたので、ようやく長年の疑問が解決しました。ただ、ちょっと細かすぎるので、読んでいて面倒だと思う人もいるかも。でも、自分の特に興味がわいたところだけを熟読するという読み方でも楽しめると思います。
また、タロット・ファンだけじゃなくて、ヨーロッパの絵画や美術などに興味がある人も楽しめるんじゃないかと思います。
著者は最初に、タロットへの今の日本での関心が、いわば精神世界系とそうではないものとに分けられると言っている。著者の意図は、初めはただの美しいプレイングカードにすぎなかったものが、精神世界的意味を付与されていく歴史を「壮大なる幻想のドラマ」として描き出そうというところにあるようにみえる。そして、ゴールデンドーンのオカルティズムから、現代アメリカに至って、ニューエイジ的な自己探求のツールとして深層心理的な解釈が全盛となっている状況までをあとづけていく。こういった大まかな流れが日本語で書かれたのは初めてのことだ。
この本は、とてもオカルトに興味を持っているようだが、実はオカルト、あるいはサイキックな現象などをまったく信じていない人によって書かれているなあ、と思える。その外側に立って美しい幻影の数々を見て楽しんでいるというスタンスである。タロットに高度な精神的意味を求める姿勢をどこかで相対化しようとする意図を感じる。タロットの「神秘」を本気で信じていない人が「タロットに神秘を感じた人々の歴史」を書いた、そんな感じの本である。どうも、現代アメリカで主流になっていて、日本でも広まってきている「精神世界系タロット」に対して距離を取りたいという意図が見え隠れするように思う。もしかすると著者こそ、もっとも手ごわい反オカルティストかもしれない。
著者は学者ではないが学者的な本である。参考文献としての価値は大きい。タロットについての知識を得るには必須の文献である。ただ、「今ここで出ている一枚のカードに何を読み取るか」ということだけにフォーカスしようとするタイプの人には、こうした情報や知識はほとんど必要ないものだろう。
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