タルチュフという人はえせ宗教家で詐欺師である。お金
持ちの家の主オルゴンをまんまと騙し、遺産をそっくり
タルチュフに譲るという誓約書を勝ち取るまでにオルゴ
ンの心に取り入ってしまう。このオルゴンのタルチュフ
への惚れ込みようが余りにも極端で、妻の病気には全然
関心を示さず、もっぱらタルチュフのことばかり人に尋
ねまくる場面など、上手い喜劇役者が演じる舞台で観れ
ば、観客は思わず抱腹絶倒となるに違いない。これは17
世紀の吉本喜劇である。ではタルチュフと吉本喜劇の違
いは何処にあるのだろう。吉本喜劇に出てくるちょっと
した敵役に比べてタルチュフの悪賢さは格上である。そ
して根っからの詐欺師で、人情話にほろりとして更正す
るなんてことはない。つまりお涙頂戴がない一段とドラ
イなコメディであるといえる。最後に敵役が負けて、め
でたしめでたしとなる点では共通していて、コメディで
あるからにはこのあたりが古今東西同じなんだなと改め
て思う。タルチュフについて言えば、何といっても前半
のオルゴンの騙されっぷりの滑稽さが秀逸で、勧善懲悪
の大団円に向けて滑稽さが削がれてゆくような気がした。