タルコフスキーという監督ほど自らの芸術と自身の生涯が重なっている人はいない。「ノスタルジア」の主人公の詩人は、故国ロシアに愛する子供たちを残したまま異国の地イタリアで熱い望郷の念にかられるタルコフスキー自身であり、遺作となった「サクリファイス」もまた、ガンに身体を侵されながら最後の命を映画制作に燃やし尽くしたタルコフスキー自身である。彼にとってはまさに生きることが映画を作ること、映画を作ることが生きることであった。 死の床での絶筆は「ハムレット・・今はもう何をする力も残っていない。」それぞれのカットが一枚の絵画の如き映像で満たされた珠玉の彼の作品は、「殉教緑」と名付けられたこの魂の苦闘の記録とともに、時をこえてその光を放ち続けるだろう。