ロックバンドのバックにオーケストラを据えて録音を行うことは、ムーディブルーズ、プロコルハルム、ピンクフロイド、EL&P、ディープパープル、マハビシュヌオーケストラからメタリカに至るまで大昔から行われています。それらと違って、本作はプログレッシブロックの大作を丸ごとオーケストラの楽曲にアレンジして演奏しようという野心的な試みです。EL&Pの大曲「タルカス」の他に、プログレ的な傾向を持つ3つのクラシック作品が配された構成になっており、CD1枚としてのコンセプトも明確です。
「タルカス」は楽譜が仕上がったのが本番の1ヶ月前とのこと。リハーサルの時間も十分ではなかったのでしょう、多少荒めのアンサンブルやフォルテシモ(つまり爆音)の連続に、生真面目なクラシックファンは眉をひそめるかもしれませんが、あまり固いことは言わずに楽しんでしまうのが正解でしょう。ハモンドオルガンの音がマリンバに置き換えられていたりと、編曲の妙を発見するのも一興。怖いもの見たさで買ったプログレファンにも、賛否はあると思いますが、なかなか面白い仕上がりになっていると思います。このチャレンジに対して、作曲者のキース・エマーソン氏も大変好意的なコメントを寄せられたそうです(そりゃ、うれしいわなー)。
個人的に聴き応えがあったのが、黛敏郎の「BUGAKU」。雅楽風の静かな始まりが、後半は陶酔と恐怖と荘厳さが入り混じったマグマのようなサウンドになるのにはびっくりしました(ライナーノーツで吉松氏は「ピンクフロイドに通じるような斬新なサウンド」と評しています。黛敏郎の交響詩「立山」は聴いたことがありますが、実に雄大かつ古典的な交響曲作品です)。
ともあれ、プログレに甚大な影響を受けている作曲家・吉松氏の青春の夢を実現した、暴挙とも壮挙ともいえる取り組みに、大いに拍手を送りたいと思います。