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だからといって内容的に薄いわけではなく、いみじくも緒方貞子が言った『世界中から忘れられた国』がどういう経緯でタリバン政権の下に支配されていったかが、様々な取材を通して書かれています。
そこから筆者は分析や推論なども多少はしていますが、それはあまり参考にする必要はありません。そういう見方もあるのか、という程度でしょう。それよりもこれがジャーナリズムの基本である、厳然として起きている事実を脚色無しに(多分)ルポルタージュしていることが大切だと思います。ジャーナリズムの使命が世界で起きていることを多くの人達に知らせることにあるとするなら、この本はその使命を充分に果たしています。
色々意見はあるでしょうが、それだけでも読んでみる価値はあると思います
こういう事態においては、傍観者的、第三者的な発言でさえ、「政治的振る舞い」となってしまう。例えば、タリバンの強制する服装をみて「人権侵害」と言うときに、知らず知らず、「アメリカン・スタンダード」を基準としていることに無批判・無自覚になっているはず。
田中宇氏はこの本で、アメリカン・スタンダードとは別の価値基準、アフガニスタンの人々の価値感などを積極的に紹介するとともに、大きな謎でありながら、あまり問われない、タリバンの成立と(緩やかではあるけれども)アフガンの人々が支持する背景や、そのタリバンがビンラディンをかくまう背景などを説明する。
こうした試みは、非常に「政治的振る舞い」として捉えられがちである。一歩間違えば「テロリストの肩を持つのか?」という批判(というより中傷といったほうがいいが)にさらされかねない。しかし、こういう事態においては、複雑な情勢の背景に関する無知に起因する感情的で無自覚な議論・コメントほど、やっかいな「政治的振る舞い」はないのだと思う。
この本を読んで、性急にタリバンを支持することもないだろうが、逆に安直なタリバン否定の立場もとりづらくなることも確か。簡単に答えの出ないはずの問題に、いとも簡単に結論が語られてしまう現在、この本はきわめて重要な情報を与えてくれると同時に、相当なスピードで書き上げられたと思われる今回の著書に、筆者・田中宇氏の危機感、使命感に思わず引き込まれてしまいます。
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