日本坂道学会副会長が東京都内の名坂の良さを知ってもらうために一般人向けに書いた入門書である。本書は都内にある名坂を著者自ら撮影した写真と解説で紹介していく。散歩ルートもきちんと載っており、著者の辿りを我々も追体験できるようになっている。これを巷に溢れるいわゆる芸能人本の類と先入観を持ち誤読してはいけない。写真をみるに著者はこれら数多の名坂を日の長い夏の天気のよい早朝にとっていると思われる。凛とした静けさ、青く茂る草木、透き通る空の青、そして主人公である坂が主に広角レンズで捕らえた一枚の写真の中にすんなりと収まっている。その写真の腕は玄人はだしの域に達している。三分坂、狸穴坂、桜坂、富士見坂の写真など、それはもう見事なものである。坂にまつわる歴史の解説はまさに白眉。著者のフィールドワークと研究の賜物。名著。