憧れの人、金井美恵子さん。彼女の編になる詩集や『愛の生活』を読んだのは、高校生だったか……。入門編に最適と聞き、久しぶりに手にとる。改行のない文章が延々と続く。行方不明になる主語、どんどん離れる述語。そして、いきなり「すぐ来てよ、病院から今遺体が来たの、今夜、お通夜よ。」売れないカメラマン夏之に、父親の死を告げる母(シャネルやジバンシィがとてもよく似合う)の言葉…… 。
アンナ・カリーナにリタ・ヘイワース、エリオットの『荒地』。久しぶりに聞く名前たち。そして、狂言回しの猫タマの鳴き声がとてもいいのだ。「ニウ」「ビニャアム」「ビャア」「イヤーッ、イヤーッ」。産後のウツぎみ時には「あたしは死ぬんじゃないかしら、ネエ、ネエ」と鳴くという。
ハーフの若いAV男優アレクサンドル君が、トランクス一丁で「蜜色に見える体毛を汗で光らせながら」亀の子ダワシでアパートの風呂場のタイルを磨く図の、シュールで美しきこと。突然夏之の異父兄弟が現れ、逐電したアレクサンドルの姉ツネコはついに現われず、最後は海の幸で大宴会。なんだかよくわからなかったが、魅力的なつぶやきだった。将来の自分の解読力に期待したい。